『マシュマロ』
お土産と手渡された袋の中身を見て、正守はため息をついた。
中身は柚子味のマシュマロ。
半月ほど前、主任達を交えて会議と称した飲み会の最中に、自らがポロッと言ってしまった一言が原因だった。
軽く酒も入り、少し饒舌になっていた時だった。
「刃鳥って、柚子の香りがするんだよ」
と言ってしまったのである。
実際彼女からはほのかに柑橘系の香りがしていたからあながち嘘ではなかったが、自分だけの秘密のように思っていたので、
――しまった――
と思ったが、時既に遅かった。
その場にいた者達が皆、刃鳥のそばに寄って香りを確認し、ニヤリと笑ったのだった。
その後ろで刃鳥が睨んでいたのも、正守には頭の痛くなる原因となった。
その次の日から、柚子味の菓子が正守の元に届けられるようになったのである。
今日はマシュマロ。嫌いではないが、こうも毎日同じ味では面白みが無い。しかし、せっかく用意してくれた物を無碍にも出来ないので、渋々袋を開けて一つつまみ、ふと思った。
――この柔らかさって、刃鳥のどの部分かな?――
触れたことはないが、きっとこのくらい柔らかな部分がきっとあるだろう。正守は想像を巡らせた。
――頬、いや違うな。胸?はもっと張りがあるだろう。となると……――
花びらのような唇を思い浮かべた。飾らないがほのかに色づいたその部分は彼の鼓動を早めるだけの魅力がある。
正守はそっと目を閉じて、つまんだマシュマロにそっと口づけてみた。ふんわりとした感触と刃鳥の香りがして、本当にキスをした気分になった。
――何をやってるんだ、俺は。まるで子供じゃないか――
思わず取ってしまった行動がバカバカしくなり、マシュマロを口の中に放り込むと、優しい甘さと爽やかな柑橘の香りが広がる。
「いつか、本当に触れられる日が来るかな」
ぽつりと言って、残ったマシュマロを机の片隅に置いた。
あのまっさんがこんな子供っぽいことを…とも思ったんですが、普通の中高生な青春を送ってなさそうなので、こんな事をしててもいいかななんて…(笑)
美希さんは柚子の練り香水なんかを付けてるんじゃないかなーって勝手に思ってるんで、こんな話になってしまいました。
以前に書いた話でも柚子湯に浸かって、柚子の香りをさせてるってのもあったな。何となくそんなイメージです。
柚子味のマシュマロうんまいよv
090821