『栗』

今日はとても天気がよく、巻緒・轟・武光の三名が子供達を連れて、 本拠地裏の山に栗拾いに出かけ、 持っていったカゴ3つにこぼれんばかりの栗を入れて戻ってきた。 栗のほとんどは台所に運ばれたが、ひとカゴ分だけ栗拾いに行った大人三名の手元に残った。

「これ、どうする?」
巻緒・轟・武光が顔を見合わせて考える。
「たき火して焼いちゃえば?」
と案を出したのは轟。それでいいんじゃね?と巻緒と武光も賛同し、 薪と新聞紙を持ち寄り、庭でたき火を始めた。
程よく火がまわったところで、栗をイガのまま投入。 もちろんこの後起こることなど知るよしも無かった。

煙に気付いた行正が近寄ってきた。
「たき火か? 芋でも入れたらいいのに」
その言葉にニヤリとした三人。
「この中に栗入れたんですよ。焼き栗美味そうでしょ?」
轟が満面の笑みをたたえて答えた。
「ちゃんと鬼皮に切り目を入れたか?」
と問う行正の顔をぽかんと見る三人。その瞬間、行正の顔が強張る。
「すぐに火を消せっ!! 栗を取り出せっ」
鬼の形相で三人に怒鳴りつけた。突然のことで驚く三人。 そして… バンッという音と共に何かが弾け飛んだ。
そう、それは栗。 三人は鬼皮に切り目を入れずに加熱すると弾けてしまうことを知らなかったのだ。
火に近づきたいが、いつ弾けるか分からない。しかしこのままでは被害が大きくなる。
轟と武光は水を汲みにその場を離れた。行正と巻緒ははじけ飛んで来るであろう栗をたたき落とす為に構えたが、 小さな栗はそう簡単に捕らえられない。庭の木に、障子に、部屋の中に栗は猛攻をかける。

「騒がしいな」と思った刃鳥が縁側に出てきた。足下に転がる元栗に気付き、拾い上げようとしたら
「副長ッ!! 逃げて下さいっ!!」
と叫ぶ行正と巻緒の声。状況が分からず固まってしまった刃鳥に向かって弾けた栗が襲いかかる。
もうダメだと思った時、刃鳥の前に人影が立ちふさがり、刃鳥自身は五重の結界に囲まれた。
「ふぅ、間に合ったか」
と別の部屋から現れた正守。どうやら刃鳥の危険を察して結界を張ったのである。では、刃鳥の前に立ちふさがった人影は?
「み…美希さ…ま、ご無事…で…」
そう言って額にイガが刺さった蜩が倒れた。それも前のめりに倒れたものだから、痛さ更に倍。 正守は蜩に気付かず、刃鳥にのみ結界を張った為、直撃したらしい。
「蜩っ! 蜩っ!?」
刃鳥が倒れた蜩に声をかける中、たき火には運ばれた水がかけられ、くすぶる中から更に被害が出ないようにと正守が結界を張った。

この後、巻緒・轟・武光の三名は、
「いいんです、美希様。私は大丈夫ですから」
と止める蜩を無視した刃鳥にこっぴどく叱られた。

台所に運ばれた栗の一部が栗ご飯として夕飯の食卓に並んだが、叱られた三名の口に入ることはなかった。


連想からふと浮かんだネタです。
浮かんだ流れ: 黒い悪魔発見→処理→秋になって涼しくなってきたから活動始めやがって→秋→そう言えばスーパーに生栗が並んでたな→栗
この連想もどうかと思いますが、そこからこの話が出来たのもどうかと思います。
名前は出てきているのに一言も喋っていない武光。ごめんな。 080914