『てるてる坊主』

霧雨が降る中、傘も差さずに帰宅した白哉は、しっとりと濡れた死覇装を早々に着替えて緋真の元に足を運んだ。

緋真は座布団に座り、はぎれを使っててるてる坊主を作っていた。
「あ、お帰りなさいませ。白哉様。気が付かず、お出迎え出来なくてごめんなさい」
「かまわぬ。集中していたようだな」
そう言われて緋真は作りかけのてるてる坊主を、申し訳なさそうな表情をした顔の前に持ってきた。
その仕草の愛らしさに白哉は胸をときめかせた。
「明日は久しぶりに白哉様とのお出かけですから、晴れになるようにとてるてる坊主を作っていました」

白哉は天気が良くないと緋真の身体に障るからだと思ったのだが、彼女はそう思っていなくて、思い出が雨で曇ってしまうのは残念だからと考えていたのだった。
「雨でもかまわないだろう。傘を差せば二人寄り添って歩くことが出来る」
緋真はきょとんとした。傘が無くとも二人で歩くのなら寄り添うのも不自然ではないのだから。
しばらく考えて、急に顔を赤くした。
白哉の意図――相合い傘――を理解したようだった。
「びゃ、白哉様。私は自分で傘を差せます。大丈夫です」
「そうではない。一緒に歩きたいのだ」
柔らかく微笑んだ白哉の顔を見て、慌て顔になっていた緋真も恥じらうような微笑みを返した。

「どうしましょう……実はもう一つてるてる坊主を作ってしまったんです」
今、緋真の手の中にあるものよりも一回り小さなてるてる坊主を出してきた。
白哉は二つのてるてる坊主を受け取り、軒先につるしながら、
「雨が上がらなければ一つの傘で出かけよう。もし晴れたら手を繋いで出かけよう」
と背中を向けたまま声を掛けた。
「素敵なお出かけになりそう。とても楽しみです」
緋真は白哉の耳が赤くなっていることに気付き、クスッと笑ってしまった。


白哉と緋真さんってささやかにイチャイチャしてそうな気がします。
緋真さんと一緒の時の白哉って子供の頃のやんちゃぶりと、今のクールっぷりのどっち寄りだったんでしょうね。今ほどクールでは無かったと思うんですが。 090623