「理由」
夕暮れ、流魂街の比較的治安の良い地域を、死神が一人歩いてる。
背の高い、子供ならすっかり隠れてしまうようなススキの中。
死神の視線の先には、小柄な女がうつむき加減に佇んでいた。
「緋真」
その声に女は顔を上げた。
「白哉様」
そう言って駆けだし、死神の腕の中に収まった。
「お会いしたかったです、白哉様」
嬉しそうな声でそう言ったのに、顔を上げて死神の顔を見ると表情が曇った。
それに気付いた死神は『どうした?』といったような顔をすると、
女は顔を伏せ、死神の胸に手を添えて、その腕から逃れた。
そして呟く。
「白哉様が私と会って下さる時はいつも、牽星箝をお外しになられるのですね。
やはり私のような者と会うところを見られるのは…」
その言葉を遮るように、死神は口を開いた。
「私は緋真に会う時は朽木白哉ではなく、そなたを想う一人の男として会いたいのだ。
それではいけないか?」
女は驚き、死神の顔を見た。死神は切なそうな視線を送っていた。
「そんな…もったいない。こうして会って下さるだけで、嬉しいのに」
その言葉を聞き、死神はそっと女を抱き寄せた。
そして女の耳元で囁く。
『私の元に来て欲しい』と。