「ハートぶれいく」
「な、な、お、ちゅわーんv」
何故かご機嫌な顔で京楽隊長が近づいてきた。
「何の用です?」
こっちは仕事を捌くのに苦労しているのに、隊長はいつもこうだから困る。
「これ、七緒ちゃんにあげる。ハート型のサブレだよ」
私の怒りを気付かぬふりをして、差し出してきた。
ここで受け取らないと、拗ねてますます仕事をしてくれなくなるので、取りあえず受け取った。
京楽隊長はじっと私を見ている。どうやら食べろということらしい。
仕方なく袋からサブレを取り出し、真ん中から割った。
「あー、七緒ちゃん。ボクからのハート割っちゃった…」
落ち込まれても困る。こうしなきゃいけない理由があるから。
「半分、召し上がります?」
そういいながら、ハートの半分を差し出した。
京楽隊長は嬉しそうにそれを受け取って、早速口にした。
「七緒ちゃんとボクとで半分こ。美味しいねぇ」
いい大人なのに、お菓子一つで一喜一憂するなんて。
でもそんな京楽隊長を少しだけ可愛いと思ってしまった。