ちょっと悪戯をしてみたくなった。
「お裾分け」
蟹沢がくれたハート型のチョコレートを一つくわえて、彼女の腕を捕まえた。
困ったような、怒り出しそうな表情を見て、平手打ちを貰う前に腕を放した。
その瞬間、蟹沢が俺の肩を掴み、唇が触れる直前まで顔を近づけて、
チョコレートを半分齧った。
咄嗟のことで何がなんだか…
蟹沢は齧ったチョコレートを指で口の中に押し込んだ。
「お裾分けありがとう。でもお返しは別よ。来月楽しみにしてるわ」
誘うような目をしてそう言った。
…どうやら俺の悪戯はバレていたみたいだ。