日記に載せた落書きからマンガにしたものです。
修兵が蟹沢さんを試したっぽい感じがちょっと好きだったりします。

マンガの下の方に少々内容の違うシリアス版のテキストを…
文章は得意ではないので、大らかな気持ちで読んで下さい。



「!」
指先に痛みが走った。
目をやると鮮やかな赤い線が出来ていた。どうやら書類で切ってしまったようだ。
「さて、どうするか」
このままでは書類に血が付いてしまうが、拭くものがあるわけでもない。
放っておけばやがて固まるからと、そのまま指先を見つめていた。

「檜佐木くん、なにぼぅっとしてるの?」
少し大人びた顔に似つかわしくない赤く丸い髪飾りを付けた彼女が声をかけてきた。
「いや、別に」と返事する前に、気づかれてしまった。
俺の手を取り、
「やだ、指先ケガしてるじゃない」
そう言ってケガの状態を判断するべく眺め始めた。

真剣な眼差しが愛しい。だが、ただの級友。
きっと彼女は俺が特別な想いを抱いてることを知らない。
想いを口にすることを頭が憚っているのに、身体は正直だ。
ケガをしていない方の腕で、彼女を抱き寄せた。

「ちょっ、檜佐木くん!? 離してっ」
彼女は空いた方の手で離れようとするが、それに反応してもっと強く抱き寄せる。
藻掻く度に、彼女から甘い香りがする。その香りに少し気を取られた瞬間

ドスッ!!

鈍い音と共に鳩尾に激しい痛みが。
「もうっ、何するのよっ。ケガの手当が出来ないじゃないっ」
顔を真っ赤にして、怒りとも困惑ともつかない顔で睨み付けてきた。
「ゴメン」
そう言うしかない。
彼女は黙ったまま、懐から手ぬぐいを出して指先に巻き付け…
グルグルグルグル
手全体が包まれてしまった。意図がわからない。

「それで充分でしょ。知らないっ」
そう言い、背中を向けて教室を出て行ってしまった。

ほんのり鼻孔に残る甘い香り、手に巻かれた手ぬぐいのぬくもり。
抱き寄せた彼女の柔らかさ。全てが嬉しい。

「さて」
明日、彼女にどう言って謝ろうか。