「大人の襖」

今夜は夜行の仕事が無く、静かな夜である。
ゆっくり寝よう。限はそう思いながら、用を足して部屋に戻る途中だった。

「頭領、止めて下さい。」
聞き覚えのある女の声。夜行の副長である、刃鳥美希のものであった。
声がしたのは頭領の部屋。何かもめている事だけはわかる。
少し気になって、声の方向に足を向けた。
「ホントに止めて下さい。そんなに激しくしたら、グチャグチャになってしまいます」
「そう? 俺は乱れた刃鳥も見てみたいけど」

『!!!!』
限はその会話にうろたえた。
いわゆる大人の会話に聞こえるそれは、14歳の少年には刺激が強すぎる。
『頭領と副長は何やってるんだ? っていうか、襖が開いたままじゃないか』
限の位置からは襖が開いていることはわかっても、その先にいる二人の様子は見えない。
慌てて周りを見渡し、誰もいないことを確認した。
大人の二人が何をしてたって致し方ないと思う反面、誰かに見られたら…
それはマズい。せめて襖を閉めなければ…
『のぞき見する訳じゃない。俺はただ襖を閉めるだけなんだ』
と何度も自分に言い聞かせて、足を忍ばせながら近づいた。
そして襖に手をかけた瞬間、思わず部屋の中に目をやってしまった。

限の目に映ったものは…正守が刃鳥の髪をタオルで拭く姿。
たかがそれだけの光景。しかし何故そうしているのかが理解出来ない。
色んなことが頭の中を駆けめぐる。そして見いだした、今自分がすべき事。
限は滝のような汗が流れる中、細心の注意を払い、そっと襖を閉めた。
そして足音を立てず、精神的疲労困憊のまま、這々の体で部屋に戻った。



なんちゅーオチじゃいっ!! この3人を絡ませて小ネタをと思ったら、
こんな話になってしまいました。
多分途中から正守も刃鳥も限がいたことに気付いていたと思います。
なんか限が可哀相過ぎるし、まっさんは美希さんに何してるのさorz080118