何故かあの男は絡んでくる。元は人間だった男は、人間に興味を持つ私に何を求めているのだろうか。
「藍緋ー、なぁこっち向けよ」
藍緋さんと呼べと何度も言ってるのに、相変わらず呼び捨てにしてくる。
「火黒。黒芒楼にいるのだから、その人皮は脱いだらどうだ?」
着る必要もないのに、人皮を着ていることが多いので聞いてみた。
「んー、そうだなぁ。これを着てると、あんたがほんの一寸だけ優しい目をするから…かな?」
ふざけたことを言う。見かけが変わろうと、そんなことで感情が左右されることはない。
所詮中身は火黒だ。
「くだらん冗談はよせ。ところで何の用だ?」
「つれないねぇ、藍緋と話がしたいだけだっつったら?」
人間を捨てた癖に、人間みたいな事を言う。
返事をせずに研究室に足を向ける。男はそのままついてきた。 |